小説 ストーリー・セラー(有川浩) あらすじとアサキの感想 [有川浩]
この記事は、有川浩さんの小説「ストーリー・セラー」のあらすじと感想なんかを書いた記事です。
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今回ご紹介させていただくのは、有川浩さんの小説「ストーリー・セラー」です!
まだ未読の方で「このあとすぐ読もうかと思っているんですー」みたいな方は気をつけてください。
ネタバレになってしまいますが、物語の大枠というか有川浩さんが仕掛けたトリックとも、解説していきたいと思います。
(一応気をつけてはいますが、ネタバレの前にはネタバレと言うので、読みたくない方は飛ばしてくださいね)
ちなみにこの小説は2010年に単行本が発売されていたそうですが、2015年12月4日にようやく文庫が発売され、僕はその日の会社帰りに購入しました…
翌日の5日、土曜なのに会社に行かなきゃいけなかった僕は、それでも通勤時間と仕事終わりの時間を使い、思わず1日で読んでしまいました…
つまり、それほど素晴らしい一冊でした!!
さて、そんなどうでもいい話はさておき、早速ですが有川浩さんの「ストーリー・セラー」のあらすじと感想のご紹介に行きます!
それでは、あらすじから…行く前に、まだ未読の人に向けての小説の概要をお伝えしておきます。
それは、このお話は中編の作品「Side:A」「Side:B」の二つの話しが収録されているということです。
短編小説はよくありますが、形にこだわらず中編といった分量の作品が二つ入っている小説はなかなか珍しいですよね!
実はこの作品、新潮社から出ている同タイトル「Story Seller」という本に掲載された作品なのです。
伊坂幸太郎さんや近藤史恵さんなどそうそうたるメンツの7人によるアンソロジー作品なのですが、Side:Aはこの作品に収録されていたのです。
ちなみに、この「Story Seller」に付けられたキャッチコピーは「面白いお話、売ります。」というもので、ものすごく興味をそそられますよね…
そのSide:Aに、Side:Bとちょっとしたトリックを追加して描かれたのが、有川浩さんの「ストーリー・セラー」なのです!
ちなみに、二つのお話は両方「妻が小説家」という点がリンクしており、実はこの部分が有川浩さんの仕掛けたトリックのキモとなるのですが…
ということで改めまして、有川浩さんの「ストーリー・セラー」のあらすじからご紹介いたします!
あらすじ…Saide:A
デザイン事務所に勤める「彼」は、同じ職場でアシスタントをしている「彼女」の事が気になっていた。
そんなある日、彼女の忘れ物のUSBメモリを見つける。
職場ではUSBメモリの使用が禁止されており、悪いとも思いつつ彼は中身を確認する…
すると、中には仕事とは関係ない、彼女が書いたと思われる小説のデータが収められていた。
その小説が、読書家の彼にとってはあまりにも魅力的で、USBを取りに来た彼女を無理やり黙らせ、黙々と読みふけってしまう。
最初は、小説を勝手に読まれた事に嫌悪感をあらわにした彼女だったが、それをきっかけに二人は急接近…
そのまま幸せな時を過ごし、やがて結婚する。
さらに、彼に勧められて出した出版社の小説賞にて、見事大賞をとる。
晴れてプロの小説家になった彼女は、一番最初の読者でもあった彼と、忙しいながらも幸せな結婚生活を営んでいた。
しかし、その小説家として華々しい道を妬む者からの必要な攻撃、父親を筆頭にした身内からのバッシングにより、彼女は次第に心が侵されていく。
そんな彼女を、彼は愛情を持って守り、そして愛する。
「君には俺がいるよ」
「どんなにひどい事になっても、俺がいるよ」
彼は、彼女にそう伝える。
しかし、ある日がきっかけで、彼女は完全におかしくなってしまった。
自宅のトイレの場所すらわからなくなってしまうほどに…
救急車で運ばれ、その後の検査でわかった彼女の病名は「致死性脳劣化症候群」といい、彼女のためだけに作られた病名だった。
この「致死性脳劣化症候群」は、思考を行えば行うほど死に近ずくという、これまでにない病気…。
しかも、彼女小説家…物語を考える事が仕事なのだ。
小説を書かない人生を選ぶか、それとも命を削って物語を紡ぎ続けるのか…
彼女の決断と、彼の思いは…
…
さてさて、Side:Bのあらすじに行く前に、このSide:Aの感想からお話させていただきます。
まずは、彼と彼女の出会いから結婚までですが、これは有川浩さんお得意の分野というか、微笑ましい恋愛模様が描かれていて読んでいて楽しかったです!
決して「恋愛小説家」というジャンルに素直に当てはまる作家さんじゃないと思いますが、それでも有川浩さんが描く恋愛は、このストーリー・セラーも含め、本当に素敵で大好きです。
しかし、途中からのシリアスな場面。
彼女が追い込まれていく姿には、思わず目を背けたくなってしまったのも事実…
人間の悪意や嫉妬というか、そういう部分を感じさせましたね。
ちなみに、ネットの評判なんかでたまにこのストーリー・セラーが苦手だという方もいるようですが、おそらくこの悪意に触れるのが苦手な方ではないでしょうか。
そして、そこからは恋愛と違う、夫婦の愛情の物語。
有川さんの引き出しの多さには相変わらず脱帽ですし、ここから最後のシーンに至るまでのお話は…
最初の感想でも言いましたが、本当に涙してしまうほどです。
しかーし、Side:Aを読み終わって、いざSide:Bに読み進もうとすると、初っ端で驚くべきことが書かれています。
それはまた後でお話させていただきますので、それではストーリー・セラーのSide:Bのあらすじにいきたいと思います。
…Side:B
会社での彼は、人当たりも良く仕事もできる、言って見れば「いい男」だった。
しかしながら、人との距離感を絶妙に測り、そのバリアの中には誰も入れない。
ある日、そんな彼と、彼女は屋上に向かう階段ですれ違う。
ほとんど人がこない屋上への階段だった上に、彼は目が潤んでいた。
彼の涙腺が緩んだ理由…それは、一冊の小説。彼はその小説に心を打たれていたのだ。
よくよく聞けば、彼はその小説を書いた作家が大好きで、本はもちろん、その作家の作品がのった雑誌まで大切に保管しているというのだ。
そして、その小説家こそ、彼女だった。
彼は、その事実に驚愕し、そして彼女に想いをよせるように…一方で彼女も彼を気になり始める。
それでも中々進展がない二人だったが、「私が小説家だから興味を持ってくれたのでは」という彼女の不安を彼は一蹴し、そして晴れて付き合うことに。
そのまま二人は晴れて結婚した。
結婚生活の中で、彼は彼女を甘やかし続けた。
会社を辞めて専業の作家になった彼女のために、献身的に尽くしたのだ。
彼女はその事に心から感謝し、彼はそれを生き甲斐にする。
お互いがお互いを思い合い、理想的で幸せな夫婦だった。
しかし、不幸は突然やってくる。
彼が交通事故にあったのだ。
さらに、取り乱した彼女にさらなる悲劇が…
交通事故による怪我は命に別状がなかったものの、なんと彼のすい臓に悪性の腫瘍が見つかったのだ。
何よりも大切で愛している彼が死に直面してしまう…彼女はそれを自分のせいだと責めた。
以前小説家の妻が病気で亡くなるという話を書いた彼女は、今度は小説家の女の夫が亡くなる話を書いていたのだ。
彼女は、自らを震えたたせ、自分の小説家としての力を信じる。
小説家は…自分は、夢を操る生き物だ。だからこの不幸を逆夢にしてやる。
彼女はその思いで、「覆れ(くつがえれ)」と一晩中キーボードを叩き続けた。
彼女の小説家としての力は奇跡を起こすのか、彼の命は…
…
さて、かなり長くなってきましたが、Side:Bのあらすじはなんとなく伝わったでしょうか。
それでは、Side:Bの感想を…お伝えする前にここで物語全体の解説(というかネタバレ?)をさせて頂きたいと思います。
まずSide:Bは、このような文章から始まります。
彼女「次はどうしよう…」
彼「前は女性作家が死ぬ話だったろ?今度は女性作家の夫が死ぬ話にしてみたら?」
彼の提案に彼女は顔をしかめた…
いかがでしょう、勘の鋭い方はあらすじ部分を読んだ時点でわかっていたと思いますが、実はこのSide:Bに登場する女性作家が書いた作品こそ、Side:Aだったということなのです!
さらにもう一つ、有川浩さんが仕掛けたトリックは、Side:Bの最後の部分で発覚します。
随分お待たせしましたが、「ストーリー・セラー」の対になる話はこれにしたいと思います。よろしくご査収ください。
原稿をメールで送ったその日のうちに、担当から電話がかかってきた。
そうなのです、Side:Bのお話も、彼女が作った小説だったのです!
これだけ見ると「なんだよー夢オチみたいなもんかよー」と思われる方もいらっしゃると思いますが、そこはさすが有川浩さん。最後の最後にもう一つ謎を残し、見事に物語の味を深くしています。
Side:Bのお話の中で、病気になった彼は会社を辞め、いろいろな事をしました。
小説家の妻を、個人ではなく法人に移したり…
縞模様の猫を飼い始めたり…
その猫に、ひらがなで「ねこ」という名前をつけたり…
その事について、Side:Bをの原稿を受け取った編集者は、彼女に尋ねます。
「あの、先生、これ…」
「先日、法人にされましたね」
「猫を飼い始めましたよね」
「グレーの縞模様に白靴下の猫でしたよね」
「名前は、ねこでしたよね」
「旦那さんが今年交通事故にあわれましたよね」
担当はしばらく黙り込み、やがて足で何かを探るような口調で尋ねた。
「このお話は、どこまで本当なんですか?」
いかがでしょう、ちょっとゾっとしませんか?
ちなみに、それに対する彼女の答えは…
「どこまでだと思います?」
…焦りました。一瞬「えっこれ実話?」って思っちゃいました!
もちろん、そんな事はありませんが…
とにかく、簡単に解説するとこういう設定だったのです!
Side:Aのストーリーを書いたのは、Side:Bの彼女。
さらに、Side:Bの中で彼女は、さらに女性小説家の夫が亡くなる話を書き、それがSide:Bの主なお話になっている。
しかし、Side:Bの彼女がその2作を編集者に渡し時の反応で、Side:Bの中ので書いた話が彼女の実話だったのでは?という謎を残す。
そして、その全てを書いているのは、有川浩さん。
もうちょっとお話するのであれば…
有川浩が描いたのはSide:Bの彼女
→Side:Bの彼女は最初に女性作家が亡くなる話を書く
→その中編小説を本にするため、セットになるお話が女性作家の夫が亡くなる話
→しかし、その女性作家の夫が亡くなる話は、実はSide:Bの彼女の実話だったのでは…
という、設定が隠されているのです!!
…これでわかりますかね。説明力不足で申し訳ないです。
とにかく、そういう設定の中で生まれたSide:A、Side:Bのお話はものすごく感動的でした。
さて、ここからはついに僕個人の感想になります!
まず、両方の作品に共通するのは「夫婦の愛」、さらに言えば女性小説家の夫に対する感謝の心でしょう。
有川浩さんご本人がよく言っていますが、有川浩さんは旦那様に大変感謝をしているそうです。
また、このストーリ・セラーに出てくる女性作家のように、有川浩さんも旦那様から小説のアイデアをもらったりなんてことも。
実際、僕の大好きな「キケン」などは、旦那様からお話を聞いて書き始めた作品らしいですね!
有川浩さんの小説「キケン」のあらすじと感想はこちら
そのため、確かに物語の中では不幸な事もあったかもしれませんが…
それでも「ストーリー・セラー」という作品は、有川浩さんが旦那様への感謝の気持ちを作品にした物なんじゃないか、という感想を持ちました。
それを裏付ける理由はもう一つ、今度はSide:AとSide:Bの相違点です。
Side:Aに関しては、女性作家自身にたくさんの不幸が舞い込みました。
たくさんの人間の悪意や軽はずみな言動が女性作家を苦しめ、それでも彼女は彼を愛すという話です。
にも関わらず、Side:Aは彼目線で描かれる描写が非常に多いです。
深読みかもしれませんが、有川浩さんが「彼にそう思ってもらいたい、そう思ってくれるはず」という願いが込められているのではないでしょうか。
また、Side:Bに関しては、Side:Aのような悪意に、病気の夫が晒されるような事は一切ありません。
また、彼は病気で仕事を辞めたあと、そのいつ終わりがきてもおかしくない人生に悔いを残さないよう動きます。
悲しいお話ではありますが、Side:Aが涙を誘う話しなのに対して、Side;Bはどこか心温まるところがあります。
またまた深読みかもしれませんが、有川浩さんが旦那様への思いと、そして願い。さらには、もしそうなった時の自分の様子を描かれたのではないかという感想を持ちました。
もう予想はついているかと思いますが、このSide:Bは女性作家である彼女目線でかかれているので、なんだか有川浩さんの声を聞いているようでしたね…。
しかし、やっぱり小説家って憧れますよね…
Side:Aの方で彼が「書ける側」と「読む側」という言葉を使っていますが、少しでも書ける側の気持ちがわかったら嬉しいです。
ちなみにこれは宣伝ですが、このブログの中でも2作ほど短編を書いた事があるので、もし読んでくださる気さくな方がいらっしゃれば、忌憚ない感想を教えていただけると嬉しいです。
さてさて、ものすごーく長くなってしまいました、申し訳ないです。ブログ始めて1年以上経ちますが、おそらく一番長い記事いなったんじゃないかな…
そんな長い記事をここまでお読み頂いた方がもしいらっしゃれば、感謝です!
以上、有川浩さんの小説「ストーリー・セラー」のあらすじと感想のご紹介でした!!
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今回ご紹介させていただくのは、有川浩さんの小説「ストーリー・セラー」です!
まだ未読の方で「このあとすぐ読もうかと思っているんですー」みたいな方は気をつけてください。
ネタバレになってしまいますが、物語の大枠というか有川浩さんが仕掛けたトリックとも、解説していきたいと思います。
(一応気をつけてはいますが、ネタバレの前にはネタバレと言うので、読みたくない方は飛ばしてくださいね)
ちなみにこの小説は2010年に単行本が発売されていたそうですが、2015年12月4日にようやく文庫が発売され、僕はその日の会社帰りに購入しました…
翌日の5日、土曜なのに会社に行かなきゃいけなかった僕は、それでも通勤時間と仕事終わりの時間を使い、思わず1日で読んでしまいました…
つまり、それほど素晴らしい一冊でした!!
さて、そんなどうでもいい話はさておき、早速ですが有川浩さんの「ストーリー・セラー」のあらすじと感想のご紹介に行きます!
それでは、あらすじから…行く前に、まだ未読の人に向けての小説の概要をお伝えしておきます。
それは、このお話は中編の作品「Side:A」「Side:B」の二つの話しが収録されているということです。
短編小説はよくありますが、形にこだわらず中編といった分量の作品が二つ入っている小説はなかなか珍しいですよね!
実はこの作品、新潮社から出ている同タイトル「Story Seller」という本に掲載された作品なのです。
伊坂幸太郎さんや近藤史恵さんなどそうそうたるメンツの7人によるアンソロジー作品なのですが、Side:Aはこの作品に収録されていたのです。
ちなみに、この「Story Seller」に付けられたキャッチコピーは「面白いお話、売ります。」というもので、ものすごく興味をそそられますよね…
そのSide:Aに、Side:Bとちょっとしたトリックを追加して描かれたのが、有川浩さんの「ストーリー・セラー」なのです!
ちなみに、二つのお話は両方「妻が小説家」という点がリンクしており、実はこの部分が有川浩さんの仕掛けたトリックのキモとなるのですが…
ということで改めまして、有川浩さんの「ストーリー・セラー」のあらすじからご紹介いたします!
あらすじ…Saide:A
デザイン事務所に勤める「彼」は、同じ職場でアシスタントをしている「彼女」の事が気になっていた。
そんなある日、彼女の忘れ物のUSBメモリを見つける。
職場ではUSBメモリの使用が禁止されており、悪いとも思いつつ彼は中身を確認する…
すると、中には仕事とは関係ない、彼女が書いたと思われる小説のデータが収められていた。
その小説が、読書家の彼にとってはあまりにも魅力的で、USBを取りに来た彼女を無理やり黙らせ、黙々と読みふけってしまう。
最初は、小説を勝手に読まれた事に嫌悪感をあらわにした彼女だったが、それをきっかけに二人は急接近…
そのまま幸せな時を過ごし、やがて結婚する。
さらに、彼に勧められて出した出版社の小説賞にて、見事大賞をとる。
晴れてプロの小説家になった彼女は、一番最初の読者でもあった彼と、忙しいながらも幸せな結婚生活を営んでいた。
しかし、その小説家として華々しい道を妬む者からの必要な攻撃、父親を筆頭にした身内からのバッシングにより、彼女は次第に心が侵されていく。
そんな彼女を、彼は愛情を持って守り、そして愛する。
「君には俺がいるよ」
「どんなにひどい事になっても、俺がいるよ」
彼は、彼女にそう伝える。
しかし、ある日がきっかけで、彼女は完全におかしくなってしまった。
自宅のトイレの場所すらわからなくなってしまうほどに…
救急車で運ばれ、その後の検査でわかった彼女の病名は「致死性脳劣化症候群」といい、彼女のためだけに作られた病名だった。
この「致死性脳劣化症候群」は、思考を行えば行うほど死に近ずくという、これまでにない病気…。
しかも、彼女小説家…物語を考える事が仕事なのだ。
小説を書かない人生を選ぶか、それとも命を削って物語を紡ぎ続けるのか…
彼女の決断と、彼の思いは…
…
さてさて、Side:Bのあらすじに行く前に、このSide:Aの感想からお話させていただきます。
まずは、彼と彼女の出会いから結婚までですが、これは有川浩さんお得意の分野というか、微笑ましい恋愛模様が描かれていて読んでいて楽しかったです!
決して「恋愛小説家」というジャンルに素直に当てはまる作家さんじゃないと思いますが、それでも有川浩さんが描く恋愛は、このストーリー・セラーも含め、本当に素敵で大好きです。
しかし、途中からのシリアスな場面。
彼女が追い込まれていく姿には、思わず目を背けたくなってしまったのも事実…
人間の悪意や嫉妬というか、そういう部分を感じさせましたね。
ちなみに、ネットの評判なんかでたまにこのストーリー・セラーが苦手だという方もいるようですが、おそらくこの悪意に触れるのが苦手な方ではないでしょうか。
そして、そこからは恋愛と違う、夫婦の愛情の物語。
有川さんの引き出しの多さには相変わらず脱帽ですし、ここから最後のシーンに至るまでのお話は…
最初の感想でも言いましたが、本当に涙してしまうほどです。
しかーし、Side:Aを読み終わって、いざSide:Bに読み進もうとすると、初っ端で驚くべきことが書かれています。
それはまた後でお話させていただきますので、それではストーリー・セラーのSide:Bのあらすじにいきたいと思います。
…Side:B
会社での彼は、人当たりも良く仕事もできる、言って見れば「いい男」だった。
しかしながら、人との距離感を絶妙に測り、そのバリアの中には誰も入れない。
ある日、そんな彼と、彼女は屋上に向かう階段ですれ違う。
ほとんど人がこない屋上への階段だった上に、彼は目が潤んでいた。
彼の涙腺が緩んだ理由…それは、一冊の小説。彼はその小説に心を打たれていたのだ。
よくよく聞けば、彼はその小説を書いた作家が大好きで、本はもちろん、その作家の作品がのった雑誌まで大切に保管しているというのだ。
そして、その小説家こそ、彼女だった。
彼は、その事実に驚愕し、そして彼女に想いをよせるように…一方で彼女も彼を気になり始める。
それでも中々進展がない二人だったが、「私が小説家だから興味を持ってくれたのでは」という彼女の不安を彼は一蹴し、そして晴れて付き合うことに。
そのまま二人は晴れて結婚した。
結婚生活の中で、彼は彼女を甘やかし続けた。
会社を辞めて専業の作家になった彼女のために、献身的に尽くしたのだ。
彼女はその事に心から感謝し、彼はそれを生き甲斐にする。
お互いがお互いを思い合い、理想的で幸せな夫婦だった。
しかし、不幸は突然やってくる。
彼が交通事故にあったのだ。
さらに、取り乱した彼女にさらなる悲劇が…
交通事故による怪我は命に別状がなかったものの、なんと彼のすい臓に悪性の腫瘍が見つかったのだ。
何よりも大切で愛している彼が死に直面してしまう…彼女はそれを自分のせいだと責めた。
以前小説家の妻が病気で亡くなるという話を書いた彼女は、今度は小説家の女の夫が亡くなる話を書いていたのだ。
彼女は、自らを震えたたせ、自分の小説家としての力を信じる。
小説家は…自分は、夢を操る生き物だ。だからこの不幸を逆夢にしてやる。
彼女はその思いで、「覆れ(くつがえれ)」と一晩中キーボードを叩き続けた。
彼女の小説家としての力は奇跡を起こすのか、彼の命は…
…
さて、かなり長くなってきましたが、Side:Bのあらすじはなんとなく伝わったでしょうか。
それでは、Side:Bの感想を…お伝えする前にここで物語全体の解説(というかネタバレ?)をさせて頂きたいと思います。
まずSide:Bは、このような文章から始まります。
彼女「次はどうしよう…」
彼「前は女性作家が死ぬ話だったろ?今度は女性作家の夫が死ぬ話にしてみたら?」
彼の提案に彼女は顔をしかめた…
いかがでしょう、勘の鋭い方はあらすじ部分を読んだ時点でわかっていたと思いますが、実はこのSide:Bに登場する女性作家が書いた作品こそ、Side:Aだったということなのです!
さらにもう一つ、有川浩さんが仕掛けたトリックは、Side:Bの最後の部分で発覚します。
随分お待たせしましたが、「ストーリー・セラー」の対になる話はこれにしたいと思います。よろしくご査収ください。
原稿をメールで送ったその日のうちに、担当から電話がかかってきた。
そうなのです、Side:Bのお話も、彼女が作った小説だったのです!
これだけ見ると「なんだよー夢オチみたいなもんかよー」と思われる方もいらっしゃると思いますが、そこはさすが有川浩さん。最後の最後にもう一つ謎を残し、見事に物語の味を深くしています。
Side:Bのお話の中で、病気になった彼は会社を辞め、いろいろな事をしました。
小説家の妻を、個人ではなく法人に移したり…
縞模様の猫を飼い始めたり…
その猫に、ひらがなで「ねこ」という名前をつけたり…
その事について、Side:Bをの原稿を受け取った編集者は、彼女に尋ねます。
「あの、先生、これ…」
「先日、法人にされましたね」
「猫を飼い始めましたよね」
「グレーの縞模様に白靴下の猫でしたよね」
「名前は、ねこでしたよね」
「旦那さんが今年交通事故にあわれましたよね」
担当はしばらく黙り込み、やがて足で何かを探るような口調で尋ねた。
「このお話は、どこまで本当なんですか?」
いかがでしょう、ちょっとゾっとしませんか?
ちなみに、それに対する彼女の答えは…
「どこまでだと思います?」
…焦りました。一瞬「えっこれ実話?」って思っちゃいました!
もちろん、そんな事はありませんが…
とにかく、簡単に解説するとこういう設定だったのです!
Side:Aのストーリーを書いたのは、Side:Bの彼女。
さらに、Side:Bの中で彼女は、さらに女性小説家の夫が亡くなる話を書き、それがSide:Bの主なお話になっている。
しかし、Side:Bの彼女がその2作を編集者に渡し時の反応で、Side:Bの中ので書いた話が彼女の実話だったのでは?という謎を残す。
そして、その全てを書いているのは、有川浩さん。
もうちょっとお話するのであれば…
有川浩が描いたのはSide:Bの彼女
→Side:Bの彼女は最初に女性作家が亡くなる話を書く
→その中編小説を本にするため、セットになるお話が女性作家の夫が亡くなる話
→しかし、その女性作家の夫が亡くなる話は、実はSide:Bの彼女の実話だったのでは…
という、設定が隠されているのです!!
…これでわかりますかね。説明力不足で申し訳ないです。
とにかく、そういう設定の中で生まれたSide:A、Side:Bのお話はものすごく感動的でした。
さて、ここからはついに僕個人の感想になります!
まず、両方の作品に共通するのは「夫婦の愛」、さらに言えば女性小説家の夫に対する感謝の心でしょう。
有川浩さんご本人がよく言っていますが、有川浩さんは旦那様に大変感謝をしているそうです。
また、このストーリ・セラーに出てくる女性作家のように、有川浩さんも旦那様から小説のアイデアをもらったりなんてことも。
実際、僕の大好きな「キケン」などは、旦那様からお話を聞いて書き始めた作品らしいですね!
有川浩さんの小説「キケン」のあらすじと感想はこちら
そのため、確かに物語の中では不幸な事もあったかもしれませんが…
それでも「ストーリー・セラー」という作品は、有川浩さんが旦那様への感謝の気持ちを作品にした物なんじゃないか、という感想を持ちました。
それを裏付ける理由はもう一つ、今度はSide:AとSide:Bの相違点です。
Side:Aに関しては、女性作家自身にたくさんの不幸が舞い込みました。
たくさんの人間の悪意や軽はずみな言動が女性作家を苦しめ、それでも彼女は彼を愛すという話です。
にも関わらず、Side:Aは彼目線で描かれる描写が非常に多いです。
深読みかもしれませんが、有川浩さんが「彼にそう思ってもらいたい、そう思ってくれるはず」という願いが込められているのではないでしょうか。
また、Side:Bに関しては、Side:Aのような悪意に、病気の夫が晒されるような事は一切ありません。
また、彼は病気で仕事を辞めたあと、そのいつ終わりがきてもおかしくない人生に悔いを残さないよう動きます。
悲しいお話ではありますが、Side:Aが涙を誘う話しなのに対して、Side;Bはどこか心温まるところがあります。
またまた深読みかもしれませんが、有川浩さんが旦那様への思いと、そして願い。さらには、もしそうなった時の自分の様子を描かれたのではないかという感想を持ちました。
もう予想はついているかと思いますが、このSide:Bは女性作家である彼女目線でかかれているので、なんだか有川浩さんの声を聞いているようでしたね…。
しかし、やっぱり小説家って憧れますよね…
Side:Aの方で彼が「書ける側」と「読む側」という言葉を使っていますが、少しでも書ける側の気持ちがわかったら嬉しいです。
ちなみにこれは宣伝ですが、このブログの中でも2作ほど短編を書いた事があるので、もし読んでくださる気さくな方がいらっしゃれば、忌憚ない感想を教えていただけると嬉しいです。
さてさて、ものすごーく長くなってしまいました、申し訳ないです。ブログ始めて1年以上経ちますが、おそらく一番長い記事いなったんじゃないかな…
そんな長い記事をここまでお読み頂いた方がもしいらっしゃれば、感謝です!
以上、有川浩さんの小説「ストーリー・セラー」のあらすじと感想のご紹介でした!!
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いきなりすみません。
ブログ読ませて頂きました。
読んでいて、わ…わかる!!!と凄く共感して、自分も有川さんの大ファンなだけに身近に感想をいい合える友人もおらず、興奮のあまりコメントさせて頂きました 笑
これからも是非読ませて下さい!!
by 宙太 (2016-02-03 23:11)
宙太さん
アサキです、お返事が遅れてしまい申し訳ないです。
コメントいただきありがとうございます、ものすごくありがたいです!ぜひ色々な本の感想など教えていただけると嬉しいですし、よければお勧めの本など教えてください!
よろしくお願い致します。
アサキ
by カツオ (2016-02-14 13:21)
突然のコメントすみません!
昨日ストーリーセラーを一気読みし、感動したのに私の頭ではなかなか理解出来ない作風に悩んでいた所、アサキさんの解説を読み、またさらに感動してついコメントさせていただきました。アサキさんの書く解説及び感想は思わずまた読みたくなる、そんな文章です。他人の感想を読むことは批判もあり怖かったのですが、アサキさんの解説.感想を読めて出逢えて良かったと思いました。
また、文章からアサキさんの本と作者への配慮、優しさを感じ心温まりました。
これからもそのままで、本を好きでいて欲しいです。
長文失礼しました。ありがとうございました。
by ショウコ (2016-05-07 06:59)
ショウコさん
コメントありがとうございます、同じ本に感動を受けた方から嬉しいお言葉をいただき大変嬉しいです!
あくまで僕なりの感想だったり解説だったりですが、それでこの本をさらに好きになって頂けたのであれば、ブログをやってて本当に良かったと思います!
コメントをいただけた事でその事を実感できたので、ショウコさんには大変感謝しております。
ぜひ、ショウコさんもオススメの本などありましたら教えてください!
これからもブログをみていただければ嬉しいので、よろしくお願い致します!
アサキ
by カツオ (2016-05-09 19:19)
コメントを載せてからもしかしたら返信あったら嬉しいな、と思い時間ある時にブログ拝見させていただいていました(照)
わたしのおすすめなんですが、わたしは有川浩さんが大好きで、読むのは有川浩さんの作品ばかりなんです。有川浩さんならどれも好きなんですけど、初めて有川浩さんを知った『植物図鑑』(感想解説読みました!)あとは『レインツリーの国』、『旅猫リポート』、『図書館戦争』…きりがなくなるのでこの辺にしておきます。
とにかく有川浩さんの本が好きです(笑)
でも、アサキさんのおすすめ本の感想、解説を読むと他の作者さんも気になって気になって…!
今度何冊か買ってみようかなと思ってます。
by ショウコ (2016-05-09 21:47)
ショウコさん
度々のコメントありがとうございます!
図書館戦争めちゃめちゃいいですよね、実は前からブログに書こうと思っていたのですが、大事に大事に書きたくて結局かけてない現状です!笑
旅猫リポートはまだ読んでないので、今度読んでみますね!
はい、有川さんもすごく素敵ですが、他の作家さんも面白い本たくさんあるので、ぜひ読んでみてください!!
アサキ
by カツオ (2016-05-10 20:47)
度々のコメント失礼します(笑)
『図書館戦争』めちゃめちゃいいですよね!!
キャラクターが皆魅力的で、話ももちろん面白くて、大事に大事にしたいの分かります!
大事に大事に書いたブログ、楽しみにしておきますね!
『旅猫リポート』にはペットを飼ったことがあるわたしにとって涙なしでは読めないものでした。
おすすめします!
よかったらアサキさんのおすすめ本1冊教えてもらえませんか?
本好きの方に1冊絞らせるのは酷なことかもしれないですが…(笑)
by ショウコ (2016-05-11 07:39)
ショウコさん
お返事が遅くなってしまい申し訳ないです、基本週末には見るようにしているのですが、先週はコメントを見逃していて…
おすすめの本を一冊…ですか…難しい 笑
そしたら、有名どころではありますが、東野圭吾さんの「白夜行」はどうでしょう!
映画とかドラマにもなってますが、やはり小説がダントツで面白いと思いますよ!!
このブログでも取り上げているので、ぜひ見てみてください!
ただ、結構長編の作品なので、もう少し読みやすいものという事であれば、最近読んだのは橋本紡さんの「流れ星が消えないうちに」ですかね…
あとは…と、全然一つに絞れてなくてすいません 笑
アサキ
by カツオ (2016-05-22 12:12)
突然のコメント失礼します
私も昨日イッキ読みして、
「さすが……」
としか感想が思いつかないほどの
感激?衝撃?感動?
どう言えばいいのかわかりませんが、
とにかく心を動かされました
そんな気持ちを、「そうそう!!」
って頷いてしまうほど的確に
言い表して下さって、
ありがとうございます!
有川さんの作品はどれを読んでも、
心を洗われるというか、
あたたまります!
また感想など書いてくださるようでしたら、
読ませていただきたいです!
ありがとうございました(*´-`)
by りんご (2016-06-28 00:48)
りんごさん
コメントありがとうございます!
りんごさんに頂いた言葉は記事を書いた者としてものすごく嬉しいです。
有川さんには本当に心動かされますし、そういう意味でりんごさんの言葉の意味もとてもよくわかりました。
最近ちょっとさぼり気味ですがこれからも小説の感想は書いていきたいと思っていますので、ぜひ今後ともよろしくお願い致します。
アサキ
by カツオ (2016-07-10 13:33)
こんにちは。あなたのウェブに問題があります
Web Explorerのサイトでこれをテストできますか?それにもかかわらず、IEは市場リーダーです
他の人の大部分はあなたの優れた
この問題のために書く。
by Valencia (2018-02-28 20:16)